最初に泣いたのは、後半じゃなかった。
まだ誰も傷ついていない、前半だったーー
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恥ずかしながら最近この映画を観た。
ずっと観ようと思っていたけどなぜか中途半端な気持ちでは見る気になれなかった。
時間が取れたので集中して観れた。結果、観てよかったと心から思えたので感想を残しておく。
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絵が好きで、負けず嫌いで、
教室の中でちょっと浮いていて。
そんな藤野の前に現れた、京本という存在。
ふたりが一緒に絵を描くようになってからの時間が、
どうしようもなく、まぶしかった。
キラキラしてるわけじゃない。
笑顔が眩しすぎる青春とか、制服で走り抜ける放課後とか、
そういう派手さはまるでないのに、なぜか泣きそうになってしまった。
たぶんそれは、
かけがえのない“友達”に出会えたことの、
圧倒的な尊さが映っていたから。
言葉が多くなくても、
目線や背中でちゃんと通じ合っていて。
自分の世界に誰かが入り込んでくることの驚きとか、
その人と何かを一緒に作ることの喜びとか。
あんなふうに誰かと出会えることって、
人生の中で、何度あるんだろうと思った。
そして、そんな時間は、
長さじゃなくて密度で記憶に残るんだということも。
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静かで、優しくて、
少しずつ心に滲んでくるような映画だった。
何も知らずに観てよかった。
だからこそ、あの前半が、宝物みたいにまぶしかった。
京本の机の上に並ぶ原稿。
手の動き。鉛筆の音。
何かを追いかけるように描かれる線。
そのすべてが、懸命だった。
努力や嫉妬や後悔や、言葉にできなかったかけがえのない感情。
あのとき違う言葉を選んでいたら、
違う道を歩んでいたら。
でも、どの想像も現実には届かない。
藤野は本当は自分が後悔していることを、自分が一番わかっている。
それを無かったことにできるような幻想を、一瞬だけでも信じてみたくなるのだ。
それでも、
京本が描いたあの最終話が、すべてだったと思う。
生きている間に伝えられなかったことも、
作品は残る。線は残る。気持ちは、たぶん、残っている。
「じゃあ、藤野ちゃんはなんで描いているの?」
それはきっと、
君と一緒に描いた線を忘れたくないから。
君が笑ってくれると、また描きたくなるから。
そして、君に届けたい気持ちが、今もここに残っているから。
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